かつて童話賞への応募マニアだったわたしも、いつのまにか選考させていただく立場になりました。
そう、いつのまにかそうなって、ずいぶん年月が経ちました。
選考委員としての「成長」があるか……はアヤしいですが、わたしの中の常連さん、みたいな人は増えました。
自身が関係する公募以外でも、発表記事に名が出ていれば「ああ、がんばってるんだな」と、ひとり密かに喜んだり……。
そう、「密かに」なのです。
たとえ、自身が選考をさせていただいている賞であっても、その方に個人的にご助言(←生意気な!)することはできません……選評に書く以外のことはお伝えできないのです。
それが、とても歯がゆいことがある……
「これだけの文章力があるのに、なぜこんな書き方(お話の作り方)をしてしまうの?」
などと、できればお伝えしたい……。
でも、選考は「通信添削」ではないから、個々の作品について、その作者の方にお伝えすることが……コンタクトをとること自体ができないのです。
上記の「こんな書き方」というのは……たとえば「雑」ってことです。
無理やり作った「クライマックスの危機」とかね。
以下、即興の「例」ですが……窓から火事を見たら?
家を飛び出して駆けつけて住人を助けようとしてケガをした……みたいな展開を書いても、主人公がヒーローに見えるとは限りません。
その場面の状況にもよりますが、読者は、
「いや、いま持ってるスマホで消防車を呼びなよ」
とか、
「水をかけようとか、消火器を探そうとか、しないの?」
とか、思ってしまうかもしれない。
(あくまでも、そのときの状況によります)
主人公をヒーローにしようとするあまり、そこへ急いでしまう……結果「作者の意図」のほうが見えてしまうのはマイナスだと思うのです。
それなら。そのシーンに行き着くまでに「外堀」を埋めておいてほしい。
上の例でいえば、電話がまわりになく、「水」に類するものもなく……みたいな状況を先に(さりげなく)作っていってほしい。
きっと書き慣れているだろうから、それがわかるはず、と思われる書き手さんだと感じるとき……何の対処もしていないと思えるとき……
「こんなふうに、雑なのはもったいないです」
と、お伝えしたくなるのです。
が、作者さんにお会いする機会はおろか、手紙も送れないし、テレパシー能力だってない……。
「ない」「ない」ゆえに、ブログに書いてみたりするのでした。
ここを読まれることもない、と知りつつ、ね。