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夜9時に寝て朝4時に起きるgotomiwaが可能なかぎりつまらないことを書くためのブログです

怖いクリスティ

昨年から何回か、カルチャーセンターで開かれている、アガサ・クリスティの講座に出席しています。

「何回か」という書き方なのは、1期3回で今4期目なんだけど、3期目は行けなかったし4期目はあと1回残っているし、講座自体はまだ続くし(わたしが5期に出られるかどうかは未定)で、最終的に何回になるかわからないからです。これを書いている時点では8回行ったことになります。

 

講師は書評家の大矢博子さん。

大矢さん(リアルで何度もお目にかかっている)だから、そして、クリスティだから…というのが受講の理由です。

 

それまでミステリにまったく目を向けなかったわたしがクリスティにハマったのは、高校時代(なぜ手元にあったか記憶にないけど)「オリエント急行殺人事件」を読んだのがきっかけです。

それより前、中学時代に、学習雑誌に推理クイズみたいなものがあって(部の先輩が見せてくれた記憶が)それがもろ、「オリエント急行」のネタばれでした。

だから、本を手に取った時点で、犯人はわかっていたのです。

それなのに…怖くて(あまりにもドキドキして)読みながら3回泣いた……「3回泣いた」ということさえ未だに覚えているほどの衝撃でした。

 

以来、ポワロとマープルは大半(たぶん長編は全部)読み、そこからディック・フランシスやエド・マクベインレックス・スタウト…とにかくいろんな欧米の作家のミステリを読み漁りました。その後は内田康夫や西村京太郎など、日本の作家にも(「作家読み」なんです。語りだすと長いので省略)。

 

講座は一回に一作取り上げて当時の歴史・社会背景なども学べるのですが(大矢さんの知識の広さにびっくり)、そのために各回の課題本を10代以来、再読しています。

内容をほぼ忘れているものや、犯人以外覚えていないものばかりで、再読なのに新鮮に読めるのですが、改めて驚くのは、前世紀のイギリスで書かれたものなのに、人物造形が「よくわかる」こと。

このころのイギリスにも、こんな人がいたんだ!

という感じ。

もしかして、古今東西、人間の「キャラ」って変わらないのでは?

あ、そりゃそうか、シェークスピアだって、源氏物語だって、現代の人間(その時々の現代人)が「わかるわぁ」と思うから、残ってきたんだよね。

 

……と毎回思ってしまう。10代のころは、クリスティ作品を読んでも、そんなふうには考えなかった気がします。

 

クリスティの作品で、でも、わたしがいちばん好きなのはミステリではありません。

これはいろんな人がお勧めに挙げるタイトルだけど、「春にして君を離れ」。

(クリスティの、というより、わたしにとってはオールタイムベストの上のほうです)

 

「わかるわぁ」どころじゃない…他人事じゃない…泣きこそしなかったけれど、クリスティのどのミステリより怖い。マジで怖い。

ミステリじゃないのに、ミステリ並みの吸引力で、最後まで引っ張られてしまう作品です。

自戒のために、といったらカッコつけすぎだけど、何年かに一度、読み返しています。というか、開いたら、もう、そのまま読みふけってしまうのです。内容は覚えているのにね。

 

そういえば、kindle(当時はpaperwhite)を買って最初にダウンロードしたうちの一冊は、この作品でした。

もう一冊は「百億の昼と千億の夜」(光瀬龍)だけど、それについては、別の機会に。