ひと言いいたい、「まちがってるよ」
警察の生活安全課の方から、特殊詐欺についてのお話を聞く機会があった。
実際の「犯人とのやり取り」の録音を、公開してくれたのだ。
「わたくし、○○市役所の健康○○課の、○○と申します」
みたいに電話をかけてきた男の声と、受けた高齢独居男性の会話だ。
ちなみに、これは還付金詐欺の手口。
「いただきすぎたお金(医療費)が返ってきます。振込先をうかがう書類を半年ほど前にお送りしました。返送していただかねばならない、その期限が過ぎましたが、特別措置でこの電話で手続きを完了させることができます」
みたいなことをいう。
お年寄りは「ハガキじゃなく? 封筒? そんな通知、来ていたっけ?」と戸惑う。
(半年も前のことなので、「来た」も「来ない」も言えないのは、老女たるわたしも同じ)
「はい、四角い封筒でお送りしています」
という説明に、四角くない封筒があるんかい、めずらしすぎるわと(心で)小さくツッコむわたし。
こんな感じで話をつづけ、巧みに導いてATMまで行かせ、その場で指示して口座の中身を犯人の元(犯罪用の口座)へ移させてしまう……。
という手口だそうだ。
で、それはそのお年寄りの家の電話機に録音された(SDカードで提供された)「ナマのやり取り」だと警察の方は言うのだけれど、わたし、「うっそだぁ」っていいたくなってしまった。
だって、「うまい」んだもん。
話の内容だけじゃなく、話しぶり、それどころか発声まで、いかにも「市役所の○○の課の職員」みたいなの。
台本棒読みじゃないし……上で「発声」と書いたように、あれはある程度しゃべることを訓練されている人の「声」じゃないかなぁ。
それで、いわゆる「再現ドラマ」じゃないの? と疑ってしまったのだった。
(最後のほう、その男性の個人情報をしゃべるところでは警察の方が音声を止めていたから、ホンモノだとは思うけど、この警察の方もお話がうまくて……だからこそこういう場に来るのかもだけど……全部が演技と思えなくもない)←疑り深い?
ちょっとやそっとでは、あの「トーク」はできないと思う。
「俳優さんでしょ?」と思わされてしまう、発声と滑舌……何なら「美声」と呼んでもいいほどの……その才能をほかに活かせばいいのにな。
以前、わが家にもそういう電話が来たことがある。
そのときは、「改めてお電話します」的な感じだったらしい(ATMに誘導されるのではなく。そもそも義母が自力で行ける範囲にATMはないけど)。
立派な(立派か?)前兆電話である。
ここに騙せそうな高齢者がいる、と見つけるための電話だ(家族が同居してないかを確認したりもする。独居の方のほうが騙しやすいので)。
受けた義母が戸惑い、書類をひっくり返したりしているので、わたしが市役所に電話して、「××課に××という人はいますか?」みたいに確認をした(もちろん、いません)。
そのころの義母の電話はインターフォンとつながった、子機さえないものだった。
家を建てたときに、そのようなものが選ばれたらしい。
(ボタンひとつで外線につながるし、インターフォンが鳴ったときは来客との会話もできるという機械のようだ)
子機がないので、冬でも冷えた廊下で話さねばならなかったりして、「電話機を変えましょうよ」といっていたのだけれど……。
その「前兆電話」を機に、子機のある、そして、迷惑電話防止のためこの通話を録音します、とアナウンスが流れるタイプのに変えた……。
(おかげでインターフォンも鳴らなくなり、無線式のドアフォンを別に付けました)
義母の健康のためにも、これでよかったと思うのだけど。
わが市は今年(夏までに)すでに5000万円の被害が「わかって」いるそうだ。
(騙されたことを恥じて届けない人などもいるので、警察で被害を把握しているだけでこの額、という意味)
そう、生活安全課の方が何をいいたかったかというと、お手持ちの電話機に迷惑電話防止の機械を(市の補助で安く)つけられるので、ぜひお勧めしてください、民生委員のみなさん……だったわけです。
聞かせてもらった録音の男性は(結果的に)騙されなかったようだけれど、犯人のあの「うまさ」を聞いてしまうと、わたしの中で危機感は増した……絶対に「敵」のほうがウワテだとわかったからだ。
疑う力を身につけねば。
そう思わされるできごとだった。